再生のゴール
資金が行き詰まり、もうどうすることもできなくなった状態を経営破綻したと言います。
経営が破綻すれば、それは即ち倒産ということになり、すべてが終わりだと言われる経営者がおられますが、実はそんなことはありません。
そもそも倒産などというものの定義などはなく、手形や小切手が何度不渡りになっても倒産ではないのです。
一般的には手形の不渡りを2度出すと事実上の倒産などと言われていますが、そんなものは勝手な推測で言っているだけに過ぎません。
もっと突っ込んでいうならば、会社と事業とは同じようですが、実は別物だということです。
会社とは、簡単に言ってしまえば単なる箱のようなもので、事業とは収益を得るために、一定の目的を持って継続的に、組織・会社・商店などを経営する仕事を言います。
即ち、会社という箱に従業員や事業等の中身を詰め込んでいるというような感じでしょうか。
ですから、会社が倒産したとしても事業を継続しているなどという、一般的には摩訶不思議だと思われるようなことが実際には起こるのです。
したがって、資金繰りが苦しく経営が困難だということが、イコール、事業が危機的状況だということには決してならず、逆に事業で収益を上げることができず債務超過だから経営が苦しいことになるとは限らないことになります。
一般社会においては、よく、M&Aとか事業譲渡などということを耳にされるかと思います。
これは正しく、会社と事業は別物だということで売買されている典型的な取引です。
そこで、もし、現在、経営危機に陥られているとするならば、資金が行き詰まっている大きな原因は何なのかを知る必要があります。
例えば、本業は黒字なのに本社ビルを建築したときに借り入れした返済が重く負担となっているとか、本業自体は黒字なのだけれども、取引先が減少したことにより、売上が下がり収益総額よりも費用が上回るようになってしまったなど、各社さまざまな原因や諸事情があるはすです。
このような状態になると、多くの経営者は何とか立て直さなければと考えるようになります。
そして事業再生や会社を再生させるために、リスケジュールの申し込みや資金繰りに奔走され、必死で経営改善計画書や事業計画書を作成するのです。
今は、金融機関も積極的に条件変更のリスケを行ってくれますし、信用保証協会さえ了承してくれれば追加融資も出してくれるでしょう。
しかし、これが、すべてが万事上手く行ったゴールなのでしょうか。
多くの経営者は条件変更ができた。追加融資を受けることができたということで、一安心だとそこで問題解決したと終わりにしてしまいます。
ですが、この状態はいつまでも続くはずはなく、追加融資を食い潰し、延々と続くリスケからは脱却できない日々が経過して行きます。
そして、借りては返す、そしてまた足らなくなるので更に借りるということが繰り返されて行き詰まることになるのです。
そこで始めて心の底からまずいと思うようになる方が少なくありません。
しかし、もう、その時には借り入れすることもできず、手持ち資金も極僅かしか残っていない状態になられていることは珍しくありません。
このように、嫌なことや面倒なことから目を背け、楽な方へ逃げている間に、状況はどんどん悪くなって行くことになります。
そのうち、そのうち、と、日延ばしにしてきた時間は取り戻すことはできません。
そして、もうどうすることもできないと認識したときの喪失感は、ひときわ強い「痛み」として心に刻まれることになることは心中察するに余りあります。
そのようなことから、根本的な再生への道は、経営者の考え方と行動を変革する以外はありません。
「いつか」ではなく、大事なのは「今」という一瞬であり、不安に思った今こそが、事業再生や会社再生のゴールに向けて積極果敢に取り組みするタイミングなのではないでしょうか。