刀折れ 矢尽く
昔のことわざで、「刀折れ 矢尽く」 ということばがあります。
この意味は、精魂尽き果てること。 転じて、万策尽きることの例えです。
激しい戦いに刀が折れ、矢も尽きてすっかり無くなってしまう意をいう。
経営危機に陥っている中小零細企業の経営者は、追加融資を断られ、金融機関への利息の支払いさえもできない財務内容となり、従業員の給与や取引先への支払いまでできない状況にまでなると、会社の継続を諦めるしかなくなります。
そして、多くの社長は会社の破産と自分自身の破産手続きをされます。
会社の資産と個人の資産をすべて換価し、債権者に分配されていくことになります。
ここに行き着くまでには、経営者である社長は不足する資金を金融機関から調達し続けます。
金融機関から担保を求められれば自宅や工場などの不動産を抵当に入れたり、第三者の連帯保証人を求められれば奥さんや子供、両親、兄弟などの身内を連帯保証人として保証をさせたりもするのです。
そしてもうこれ以上貸してもらうことができないという状況になれば、自分や家族、身内の個人名義でカードローンやノンバンクから借り入れをしてまで会社に注ぎ込むようになることは珍しくありません。
この状態でも、未だ個人名義で借り入れできているうちは何とか繋げているのですが、銀行カードローンが2行、3行と増え、ノンバンクが4社、5社と増えて行くと借り入れが困難な状態となってしまうことになります。
この段階になると、消費税や源泉所得税などの税金滞納や社会保険料の滞納が発生していることは少なくありません。
そして、金融機関への返済ができない、個人借り入れの返済ができない、従業員の給与支払いができない、取引先への支払いができない、税金の納税ができない、社会保険料の支払いができないという状態となり、万策尽きることになります。
しかし、生真面目な経営者は、それでも何とかしなければと起死回生を図るために、この時点になり始めて専門家に相談をするのですが、こと既に遅しと破産しか方法がないと言われることが少なくありません。
そして、刀折れ 矢尽く だけでなく、「一番大切な心まで折れてしまうのです。」
この状態になるまでには、資金繰りのために融資を受け続けながらリスケも行い、それでも不足する資金を個人での借入金で補う。更に家族や身内までも巻き込んで対応してきたのです。
しかし、結果としては、債権者を始め家族や身内、従業員、取引先、税務署、年金事務所に至るまで、あらゆる人達に迷惑を掛けることになります。
確かに社長は、多くの関係各者に迷惑を掛けないようにしなければと、一生懸命努力をして来られたのです。
それが残念なことに、社長の想いと真逆の結果となって終わることとなる。
このような経過を辿られる経営者が非常に多くおられます。
では、なぜこのような結果となり易いのでしょうか。
それは、社長の頑張るところが違ったからなのではないでしょうか。
やはり、あるゆる関係各者に極力迷惑を掛けないように会社を再生させるには、自分一人で抱え込まず、「知らざるを知らずと為せ、是知るなり」 「知らずは人に問え」
知っていることと知らないことはハッキリさせて知ることが大事。【知ることができないと思わぬ過ちを犯すことがある】また、知らないことがあったら、人に尋ねて教えてもらうのが良いということ。
兎にも角にも、資金が足らなければ誰かから借りて何とかすることが、一番良いことだと信じ込んで対応された結果なのかも知れません。