一昨年の11月、日経新聞に記載されていた記事です。
経済産業省は、中小企業の融資が焦げ付いた場合に国などが肩代わりする信用保証制度を
見直すと正式に発表した。
現在は、原則として債務の80パーセントを保証しているが、創業から時間が経って
経営が安定した企業は引き下げる案を検討する。
一方で、ベンチャーなどの成長企業の保証料率は比較的手厚くして資金を借り易くする。
中小企業政策審議会で方針を示し、専門家などの作業部会を立上げて年内にも見直し案を
固めるとのこと。(昨年末)
企業の成長段階に合わせて保証率を5~8割程度に区分する案が浮上している。
信用保証制度は、都道府県などにある信用保証協会が中小企業から保証料を取り、融資が
焦げ付いた場合に肩代わりする仕組み。
協会が原則として8割を肩代わりし、残りは金融機関に負担を求める。
保証率を見直せば、全額保証から80パーセント保証に移した2007年依頼の抜本的改定になる。
という記事が出ていたことを覚えていらっしゃいますか。
これは、かなり衝撃的なニュースでしたね。
多くの中小零細企業が金融機関から融資を受けるときには、必ず審査があります。
その与信審査の格付けで引っかかり融資が難しい場合、信用保証協会が保証を付けることで融資を受けられていることが多々あると思います。
2007年まではその保証も100パーセントでしたが、それ以降は融資額の80パーセントまでの保証となっています。
即ち、銀行が残りの20パーセントのリスクを負うことになる責任共有制度が行なわれる
ことになったのです。
それが昨年、信用保証制度を見直すということになり、まだ実施には至っていませんが
近い将来、金融機関はもっと大きなリスクを負わなければならなくなるのは必至です。
それから、経営者保証ガイドラインも運用が開始されています。
(1) 法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者個人の保証を付けないこと。
(2)多額の個人保証を行なっていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に、一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100万円~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること。
(3)保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は、原則として免除すること。などの内容が取決められました。
また、10月22日の日経新聞記事には、担保より将来性で融資をするように変革しなさいという金融政策方針が打ち出されました。
このように、次から次へと新たな方針が打ち出されているので、第三者の連帯保証人も減り、債務者に取っては再生再起できるチャンスが増えることになりました。
しかし、ここで問題となりそうなことがあります。
それは、信用保証協会の保証料率が下がるということです。
以前の金融機関は、どのような財務状況であったとしても、万が一、貸付した企業が倒産をしても信用保証協会がすべて負担してくれていたのですから、リスクはまったく無かったのですが、
それが20パーセントのリスクを負うようになり、更に50パーセントまでのリスクを負うことになる。
更に担保を取らない、第三者の連帯保証人も取らないということになれば、銀行としては
大きなリスクを負う可能性が増えてしまうので、
当然、融資に伴う与信審査を厳しくして、審査基準に満たない企業への貸し出しを控える
ようになる可能性が高まります。
通常の営業をしている企業でも融資審査が厳しくなり、融資が受け難い状況になるのですから、一度でもリスケをした企業は、先ず再起して融資を受けることは厳しいかも知れません
また、いくら業績が長くても万年赤字体質の会社であれば、今までは何とか融資をして貰えていても、今後は資金繰りが厳しいからと言って、資金調達をすることは厳しくなるのではないでしょうか。
結果として黒字で優秀な企業や、今後、展望が明るい企業など、将来性が期待できる企業への先行投資資金はどんどん貸し出して、
万年赤字体質の企業や債務超過の企業、決算書を粉飾している企業、リスケをしたことのある企業は、融資をせず淘汰してしまおうと考えての施策なのかも知れないですね。
このようになってしまえば、真っ先にターゲットとして淘汰されるのはリスケ中の
会社です。
既に何年もリスケを延長している企業は、先を見越した対策を取っておく必要が
ありそうです。